1. まずは押さえたい,人事評価の4つの目的


◆ 報われない営業Aさん?

 中堅不動産会社の営業Aさん。売上げ成績はダントツで,誰もが認めるトップ営業です。ところが,この会社の評価制度では「能力」を重視し,昇格テストに合格しない限り給料は上がりません。そのため,売上げはそこそこでテスト勉強ばかりしているBさんのほうが高く評価され,給料も高くなっています。上司からは「しっかり勉強しないと昇格できず,給料も上がらないよ」と言われています。
 この話を聞いて,あなたはどう感じますか? 営業はやはり数字が大事で,成績優秀なAさんは評価されるべきであり,これでは報われないと思ったのではないでしょうか。しかし,もしこの会社の経営陣に,何らか戦略的な意図があったとしたらどうでしょう。たとえば「この業界はさらに競争が激しくなり,当社としては,建築やデザインなどの専門知識を駆使しながら,単なる物件紹介にとどまらないコンサルティング営業を展開して,他社との差別化を図っていく」といった思いがある場合には,もしかすると,能力重視の評価というのも理にかなったものかもしれません。

◆ 人事評価には4つの目的がある

 あらためてですが,皆さんが評価している(もしくは評価されている)人事評価は何のためにあるのでしょうか? 企業は「何か」を実現するために,利益を継続的に創出することが求められます。そのために事業を推進していくうえで必要な人材を確保し続けることが,人事評価を行う目的となります。より具体的に見ていきましょう。
 1つ目の目的は,事業推進に貢献する者の生活を担保し,また意欲を持って業務に取り組んでもらうために,業績行動能力等に見合った公平な処遇を決定することです。
 2つ目の目的は,事業を推進するうえでの適材適所を実現することです。具体的には,昇進・昇格・異動の参考情報として過去の評価結果を活用することになります。
 そして3つ目の目的は,評価を通じて明らかになった本人の強みや改善点を認識させ,動機づけをしながら人材育成につなげていくことです。



◆ 評価を通じて,戦略を伝達・実践する

 人事評価には,さらにもう1つ大切な4つ目の目的があります。それは戦略の伝達・実践です。冒頭の営業Aさんの話にもありましたが,会社としては今後の市況を考え,社員にはより高い能力・スキルを身につけることを要望しています。そのために何を学び,何を実践してほしいかを,人事評価を通じて伝えているのです。
 もし皆さんが,下記のような評価ウェイトのついた個人目標を与えられたとしたら,どのように考え行動するか,想像してみてください。

@ 売上げ80%   利益15%     部下育成5%
A 売上げ40%   利益20%     部下育成40%
B 売上げ20%   販売個数30%   部下の販売個数50%

 まず@の場合,売上げをあげることに邁進し,おそらく部下育成を後回しにしてしまうのではないでしょうか。続いてAの場合は,部下育成の比率が高まっているので,@の場合よりは積極的に部下の面倒を見るようになるかもしれません。
 Bの場合はどうでしょう? 今度は「部下の販売個数」のウェイトが高くなっています。この場合,部下がどうしたらうまく販売できるようになるか真剣に考え,実践的なアドバイスをしたり,同行営業をしたりと,部下をサポートしていくのではないでしょうか。
 Aの表現では,「部下育成を頑張ろう」とするでしょうが,あまり具体的な成果が出ない可能性があります。一方,Bのように示せば,部下を育成するためのより実践的な行動を促すことができるでしょう。このように会社としての「意図」である戦略を伝え,実践につなげていくのが人事評価の大きな役割であり,目的でもあるのです。

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