4 何を評価するか ―― 評価要素の構成

 評価要素の構成を理解する

 人事評価の評価要素はさまざまですが,ここでは職能資格制度にもとづく分析評価の仕方を解説します。いわゆる「評価表」による評価の方法です。この場合,一般に能力評価意欲評価成績評価の3つの要素で構成されます。成績評価は「結果」を評価するものであり,「能力評価」と「意欲評価」(取り組み姿勢,情意)はその結果を生む「原因」または「プロセス」を評価するものになります。
 人事評価をする場合,何らかの基準(ものさし)がなければ恣意的なものになってしまいます。各評価要素(項目)は次の基準によって評価することが大切です(図表7)。
 @ 能力評価……「等級基準」(職能資格基準)にもとづき必要能力を評価する項目で
   構成されます。評価の視点は能力の充足度,保有度になります。
 A 意欲(情意)評価……「組織人としての自覚,姿勢」「仕事に対する意欲」の有無
   を評価する項目で構成されます。評価の視点は業務遂行上の努力度をみることで
   す。
 B 成績(成果)評価……最近は「目標管理」による成果評価が多くなっていますが,

 ■ 図表7 評価要素(項目)の一般的な構成

 ■ 図表8 原因(プロセス)と結果の関係

評価表による場合は業務の達成度,遂行度が評価の視点になります。

 「能力」と「成績(成果)」は必ずしも一致しない

 評価要素(項目)による分析型の人事評価は,「能力評価」は能力をみるものであり,「意欲評価」は態度ややる気をみるものです。この2つが原因あるいはプロセスとなって「成績評価」という結果が導かれます。
 そうはいうものの,人間の行動は複雑であり,「能力」と「成績(成果)」は必ずしも一致するものではありません。能力があってもやる気がなければ,よい結果が出るかどうかわかりません。逆に,能力がなくてもやる気があれば,よい結果がでることもあります。能力があって,やる気があればよい結果を出す確率は高いものの,いつもそうなるわけではありません(図表8)。
 分析型の人事評価においては,それぞれの評価要素(項目)は別のものとして分析的にみていくことが大切です。能力はどの能力がどのように発揮されたかを評価し,意欲は各要素の努力度を評価し,成績は達成度(成果)をきっちり評価していくことです。各評価要素(項目)は独立したものとして評価しなければなりません。仮に,能力も意欲も不十分であるといえる部下が,たまたま大きな成果をあげたような場合に,それは運がよかっただけだからと考えて成績評価を下げるというような評価の仕方は誤りです。
 なお,最近の人事評価の特徴として,上位資格(グレード)の従業員の「成績(成果)」評価のウエートを高くして,成果による業績評価中心の評価制度を採用するところが多くなっています。この場合,目標管理によって運用されることが多く,企業業績に連動した目標の設定と評価基準の事前の設定がポイントになります。

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