8 評価基準の考え方と評価段階の選択

 「評価段階の選択」の留意点

 人事評価の「手順B」は評価段階の選択です(図表13)。
 「評価要素(項目)の選択」によって,適正な評価要素にあてはめられた職務行動は,「成績評価」「意欲(情意)評価」「能力評価」のそれぞれに定義された「評価基準」にしたがって「段階の選択」を行います。
 段階の選択とは平たくいえば点数づけを行うことですが,人事評価の点数づけは「測定」ではなく,「判定」であることに留意する必要があります。つまり,学科試験のように100点〜0点の範囲に点数が分布するという性格のものではなく,フィギュアスケートや体操競技のように採点者の「判定」が評価のポイントになります。評価者は評価制度をよく認識し,評価スキルに習熟することが求められます。
 「段階の選択」は「5・4・3・2・1」あるいは「S・A・B・C・D」などの「5段階」で評価するところが多くなっています。公平性を担保し,差をつけるために「4段階」「6段階」「7段階」「10段階」などの場合もありますが,基本は人事評価制度に定められた(会社が決めた)基準をクリアしたかどうかがポイントです。
 「5段階」評価の場合,いちばん大事になるのが,「3」あるいは「B」の段階が「ほぼ期待どおり」「標準」であることを強く意識した評価をすることです。「期待水準」をクリアした場合が「3」あるいは「B」の評価ということになります。
 実際に「段階の選択」を行う場合は,まず「3」あるいは「B」段階であるかどうかの評価を行い,それ以上によくできていれば,「4」あるいは「A」と評価し,できていなければ,「2」あるいは「C」と評価します。これで,3段階の評価になりますが,改めて「4」あるいは「A」,「2」あるいは「C」と評価したものについて吟味し,最終的に「5」あるいは「S」,「1」あるいは「D」の評価を行います。

 評価基準のあり方に注意する

 人事評価における評価基準は制度として会社が定めたものが基本です。人事評価は,この「会社が定めた基準」をもとにどう実施するかが課題になります。

 ■ 図表13 評価段階の選択

 会社が定めた評価基準は,職能要件書,職務記述書(ジョブディスクリプション)などをもとに設定されるもので,能力評価基準の場合,次のようなものになります。
  「S」…上位等級(グレード)に求められる能力を保有している
  「A」…現在の等級(グレード)に求められる能力を完全に保有している
  「B」…現在の等級(グレード)に求められる能力を保有している
  「C」…現在の等級(グレード)に求められる能力を下回る
  「D」…現在の等級(グレード)に求められる能力を保有していない
 これとは別に,「上司の期待する水準」と「本人が満足する水準」があります。これらは「水準」であって「基準」とはいえませんが,実際の評価にあたって留意しておく必要のある事柄です。「上司の期待する水準」は,管理者として自部門(部課)の目標達成のためにこれだけはやってほしいという期待を含んだ水準です。したがって,一般に要求水準が高くなりがちです。これに対して,「本人が満足する水準」は,自分で決めたここまでできればよい,とする水準ですから,一般にやや甘めの水準になります。
 この差(ギャップ)が目標管理における成果評価時に問題になることがあります。成績(成果)評価は処遇に直結します。目標設定時の面接によって,目標の達成水準を決めておくことが大事です。事前の合意がなければ,評価の満足度を高めることはできません。

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