3 フレックスタイム制

 これまで,フレックスタイム制は清算期間が1ヵ月であったため,効果が十分でなかったり,清算が煩雑になる場合があり,導入企業は少数にとどまっていました。今回の働き方改革で清算期間の上限が3ヵ月に延長されたため,導入効果が期待でき,労働者にとってもワーク・ライフ・バランスを実現できるため,導入する企業は増加が見込まれています。

◆ 法改正の概要

 フレックスタイム制とは,労働者が始業時刻および終業時刻を決定する制度で,清算期間内の実労働時間が総労働時間内に収まっていれば,1日8時間,1週40時間の法定労働時間を超えても時間外の割増賃金が発生しない制度です。この清算期間は1ヵ月以内でしたが,働き方改革における労働基準法の改正により,2019年4月1日より清算期間が1ヵ月を超え3ヵ月まで延長できるようになります。

1ヵ月の労働時間が週平均50時間を超えた場合

当月に時間外割増賃金を支払う

1ヵ月の労働時間が週平均50時間に満たない場合

通常賃金を支払い,不足時間の翌月持込が可能

完全週休2日制で,1日の所定労働時間が8時間の場合

清算期間を3ヵ月に延長した場合,所定労働日数×8時間を法定労働時間の総枠にできる

※ 清算期間が1ヵ月の場合は,届出は必要ないが,1ヵ月を超える場合は所轄労働基準監
  督署長に届出が必要。

◆ 3ヵ月清算期間の導入が向いている職種

フレックスタイム制が
適していると考えられる職種

フレックスタイム制が
適さないと考えられる職種

・企画部門        ・IT系の職種
・設計等の職種

・製造現場        ・建設・工事関連
・医療・介護系業務

※ 実際の判断は個別具体性がありますので単純に当てはまりません。

【IT系のプロジェクト管理が必要な職種】
 通常,プロジェクトなどは数ヵ月から数年と長期にわたります。プロジェクト業務には繁閑の波がある場合が多く,労働時間を調整することが可能となります。プロジェクト終了後,労働時間を短縮し,次期プロジェクトに備えるなどの対応が考えられます。
【決算処理,社会保険の算定など月をまたぐ繁忙期のある職種】
 これらの職種は一般的には1ヵ月の月内できちんと終わる職種ではないと考えられますので,現在フレックスタイム制度が導入されている職場では,清算期間延長の効果が出やすいと考えられます。
【建設・工事関係の業務】
 作業現場は全員揃わないと業務を行えないのでフレックスタイム制は導入できません。ただし,設計業務は問い合わせ業務などさまざまな対応に追われるので,現場の進捗をみながら労働時間の調整が可能になります。

◆ 導入のすすめ方の例(会社によって取り組みは異なります)

 フレックスタイム制の導入にあたってはトップ(部門のトップも含む)の判断が不可欠です。トップの指示で担当者が現状調査を行い,導入方針案を作成してトップの判断をあおぎます。導入の決裁が下りた場合は,改めて導入目的・導入範囲を決め,賃金制度の検討や規程類の整備のうえ,労使協定締結へとすすめます。労使協定が締結されたら,説明会開催など従業員への周知が必要です。総務などの実務に滞りを生まないため,従業員の申請方法や給与関連のシステムの変更も含め,実務が正しく流れるかを確認する必要があります(図表5)。
 実際に動きはじめたら,導入効果を測定し,問題点と課題を洗い出し,改善をすすめます。

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