3.ケンカをしても信頼し合うチームづくり


 会議の参加者がそれぞれ自分の考えを主張し合い,時にはバトルを繰り広げるものの,それが終わるとついさっきまでケンカ寸前までいったことなど忘れてしまう。そんなチームにあこがれたことはないでしょうか。
 人は自分の意見が否定されるとよい気持ちはしません。こんな思いをもった経験はありませんか。あるいは,このようなことは想像できませんか。

ABCインダストリー(株)の開発部に所属する社員Xの思い
 今日は月1回の開発会議。開発会議といってもうちの部だけでなく製造,営業,財務など他の部門のほか,社長以下全役員が参加するのでみな緊張し,言いたいことも言えない雰囲気だ。この間はわたしが温めていた新製品企画を発表したところ営業部門の参加者から「営業現場のことを知らないやつの考えじゃないか」などとあっさり否定された。製造部門からは「売れない商品のアイデアはもうたくさんだ」などというコメント。あんなに悔しい思いをしたことはない。もう二度と発表しない。会議ではずっとだまっておこう。


◆ 意見の否定は人格否定?

 自分よりもずっと年上の先輩や役員が参加している中,勇気をふりしぼって手をあげてみる。そして自分の思いをぶつけてみたら即座に否定され,それ以後何も言うことはできなかった。こんな場合,この人は意気消沈し,それ以後会議ではほとんど発言することがなくなる,ということになってしまうのではないでしょうか。

◆ 疎遠になるコミュニケーション

 大勢が集まる場面でなく一対一の討論でも,自分の意見に異を唱える相手に対してはよい思いをもつことは少ないのではないでしょうか。そしてだんだん人間関係が悪くなり,どうしても話さなければならないこと以外には話し合うことはなくなっていく。これではチームが活性化しているとはいえません。
 Xさんの気持ちもわかりますが,互いに波風を立てないように言いたいこともがまんして言わず毎日を過ごすようでは仕事がはかどるわけはありません。そればかりか自ら考え,工夫をしながら仕事をすることなどおよぶべくもありません。

◆ 人と意見を切り離す

 メンバーが自分の意見を遠慮することなく示し,議論を戦わせ,それでも人間関係がくずれることのない活性化されたチームに属するメンバーにはどのような共通点があるのでしょうか。
 それは発言した「人」と発言の内容を切り離して考えられるチームだということです。議論が白熱しても,「意見は意見,人は人」というように頭を切り替えることが大切です。

◆ 論理的に考える

 人と意見を切り離して考えようとするときに大事なのは他者の意見,主張を論理的に理解するということです。情緒的,感情的ではなく論理的,理屈で考えるのです。
 なぜあの人はこう考えるのだろう。なぜわたしの考えとは異なる意見をもっているのだろうかと疑問をぶつけてみるのです。反論や抗議ではなく質問です。

 ・相手の言うことを素直に受け入れる
 ・相手の主張の根拠をたずねてみる
 ・その根拠が妥当であるかどうか客観的に考える


◆ 人はみんな違うことを受け入れる

 また,「人はみんな違う」「違ってもよい」「人から好かれなくてもよい」と思うことができるようになれば気持ちが楽になります。
 自分の意見が認められないと悲しくなったり怒りがこみあげたりする気持ちの底には「わたしは仲間から好かれ,愛され,尊敬されなくてはならない」という意識があるのではないでしょうか。それがとらわれとなってしまうと,他人からの反対意見を耳にすると自分も否定されたような気持ちになってしまいます。

◆ 異論を認め,互いに尊敬する

 「人はみんな違うのだから考え方も違ってよい」ということと「考え方が異なっても互いに尊敬し合う」という二つのことを肝に銘じておくことです。これができるようになれば「仲間と同じ意見にしなくてはならない」とか「仲間はずれになりはしないか」などという心配はなくなります。

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