4.人的資源管理から人的資本経営へ


人材はコストではなく中長期的な投資の対象

 人材業界におけるもう1つの旬のキーワード,それが「人的資本」あるいは「人的資本経営」です。昨今,企業における「人的資本」への関心が高まっています。大手企業を中心に人的資本経営をどうやって実践していくのか,という話題がホットなトレンドになっていると実感しています。

◆ Keyword

 人的資本/人的資本経営

 人的資本:人材を「資源」として消費するのではなく,「資本」として投資す
 る対象と考えること。
 人的資本経営:企業や組織で働く人材を資本の1つとして捉え,その価値を最
 大限に引き出すことによって中長期的な企業価値を高めていく経営手法のこと。
 具体的には,人材の採用,育成,リテンション(優秀な人材の維持・確保)な
 どを戦略的に行い,企業価値の向上につなげる経営の在り方。

 というのも,筆者が研修の提案をするにあたり,社員1人ひとりの個の最大化とチーム力の最大化に頭を悩ます現場の声を数多く聞くからです。
 ここで,企業における人材に対する捉え方の変化について紹介します。2022年5月,経済産業省から通称「人材版伊藤レポート2.0」という報告書が公表されました。人的資本を重視した,企業価値の持続的向上につながる人材戦略を策定・実行することを経営陣に求めたもので,「人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素」を枠組みとして,実行に移すべき取り組みやその重要性,効果的な方法が示されています(図表参照)。背景には,AIの台頭やコロナ禍に代表される世界規模の予測不可能な事態など,経営環境の激変がありました。
 人材マネジメントにおいて,これまで企業の人材は「人的資源(Human Resource)」であり,人的資源にかけられる費用はコストと捉えられていました。対して,「人材版伊藤レポート2.0」では,人材を「人的資本(Human Capital)」として捉え,相応の費用や時間をかけて育てていくべきものとしています。
 人材に投じる費用は,コストではなく投資であって価値創造に資するものとして捉える。こうした人的資本経営を強く示した「人材版伊藤レポート2.0」は,大企業を想定した内容ではあるものの,組織の規模を問わず,企業が人材戦略について考えるきっか

けになりました。

人的資本経営とキャリア自律

 「キャリア自律」によって個々のポテンシャル(可能性)を引き出し,人的資本を最大化させるのが「人的資本経営」といえます。人的資本は投資をすれば変化し,成長するものという考えが前提としてあるからです。
 キャリア自律によって個の最大化(さらにはチーム力の最大化)を図ることが人的資本経営であり,キャリア自律が実現している会社は「働きやすく,そして働きがいの感じられる会社」であり,そうした会社が採用難の時代にも選ばれるのです。

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