8.軋轢を生じさせないシニア人材との接し方

シニアとの仕事をスムーズにするコツ

 年下上司がシニアと仕事をするときは,相手の考え方や心情を察し,相手に調子を合わせることも必要でしょう。業務経験の豊富な大先輩ですから,トップダウン式の命令ではなく,協調の姿勢で仕事を依頼することが大切です。
 無論,若手社員に対しても一方的な指示ではなく,相手の理解と合意を得ながら仕事を進める必要がありますが,シニアに指示を出す場合は表現にひと工夫を加えることでコミュニケーションが円滑になります。接し方のポイントは以下のとおりです。
■ ハイコンテクストを意識する
 16ページで解説したように,シニアは相手の意図をくむハイコンテクストで物事を理解する傾向にあります。ですから,シニアと対面で会話をしたりメールでやり取りをしたりするときは,新人に教え諭すように細々伝えるのではなく,おおまかな表現のハイコンテクストを意識すると,物事がスムーズに運びやすくなります。
 ハイコンテクストの表現は,「直接的ではなく,含みを持たせて伝える」「すべてを話さず,行間の意図をくみ取ってもらう」「論理的ではなく,情緒的な言葉を選ぶ」に大別できます。とはいえ,相手が曖昧な表現を理解しているかどうかは,相手の受け取り方しだいなので,間をあけて様子を見ながら話すとよいでしょう。

ハイコンテクストの表現例


  ●直接的ではなく,含みを持たせて伝える
   → 表現例@「この案件,ちょっとあれですね」
     表現例A「いつもお世話になっています」

  ●すべてを話さず,行間の意図をくみ取ってもらう
   → 表現例B「そろそろ繁忙期になります(残業してほしい)」
     表現例C「行けたら行きますよ(おそらく行かない)」

  ●論理的ではなく,情緒的な言葉を選ぶ
   → 表現例D「先輩はわが社のエースです」
     表現例E「為せば成ります。気合いを入れていきましょう」

■ 仕事を丸ごと任せ,細かい指示はしない
 シニアには,豊富な職務経験で培われた自分なりの技術やノウハウがあります。ですから,年下上司から事細かに仕事の段取りを指示されることは好みません。シニアに仕事を任せるときは,おおまかな業務内容とスケジュールを伝えて仕事をお任せしたほうがいいでしょう。
 とはいえ,シニアの持つ技術やノウハウが古く,現在の社内業務に当てはめると効率が悪いこともあります。その場合も,技術やノウハウの古さを直接指摘するのではなく,改善の方向性を示唆するほうが効果的です。
■ 積極的に挨拶をする
 通常,社内の挨拶は部下が上司にするものです。しかし,年下上司の場合は,部下のシニアがかつての上役だったりすることもあります。そのため,社内的な職位に関係なく,シニアには年下上司からも積極的に挨拶をしたほうがよいでしょう。「○○さん,おはようございます」と年下上司から挨拶をされるだけで,シニアは鼻が高いものです。逆に,シニアが年下上司に挨拶をしなくても気にしてはいけません。
■ ときとして相談を持ちかける
 再雇用されたシニアは,今でこそ役職から外れて平社員のような立場ですが,豊富な職務経験に裏打ちされた見識があります。特に,定年前には管理職としてスタッフを束ねてきたシニアならなおさらです。ときには相談を持ちかけて,先輩としてのシニアの見識に頼ってもいいでしょう。シニアは,年下上司から相談を持ちかけられると自己肯定感が高まりうれしいものです。こうしたコミュニケーションは,シニアにとって仕事のモチベーションを高めるきっかけにもなります。
■ 敬意(感謝,ねぎらい)を忘れない
 継続雇用で働くシニアは,正社員だった頃に比べて給料が下がるなど,不利な条件を受け入れながら業務に就いています。中には,定年前と同じ業務量をこなしている人も少なくないでしょう。そうしたシニアの忍耐,頑張りを,年下上司は当たり前と思ってはいけません。常に感謝やねぎらいの言葉をかけて,敬意を忘れないようにしてください。

    Point

●意思の疎通ではハイコンテクストを意識し,相手の受け取
 り方を見ながら話す
●敬意や感謝を示すとモチベーションが上がりやすい

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