2.エフェクチュエーションを学園祭にたとえると


エフェクチュエーションの形成過程

 エフェクチュエーションの論理は,どのようにして形成されたのでしょうか。アメリカにおいて,個人またはチームが1社以上の企業を設立し,創業者としてフルタイムで10年以上活動し,さらに少なくとも1社が株式公開を果たした27名の起業家を対象に,「シンクアラウド法」と呼ばれる調査方法を実施しました。
 シンクアラウド法とは,もともとコンピュータプログラミングの研究に使われていた手法で,人が問題解決や意思決定の過程でどのように考えるのかを解析します。その中で,17項目の質問リストを用いて,参加した起業家たちに問題解決の過程を言葉にしてもらい,それらを収集して研究の基礎データとしました。
 なお,サラス・サラスバシー教授は,エフェクチュエーションが一般的な「理論(Theory)」ではなく,経験豊富で成功した起業家たちの行動から派生した一貫性のある「論理(Logic)」であると強調しています。つまり,エフェクチュエーションは現実世界の行動にもとづいて構築された論理体系であり,単なる仮説や命題にとどまらないということを意図しています。

エフェクチュエーションのステップ

 エフェクチュエーションの具体的なステップについて,学校の文化祭で出し物を決めるプロセスを例として説明します。
 ステップ1 :手元にある資源を確認し,パートナーを集め,出し物を考え,予算(損失ライン)を決める
 必要に応じて,パートナー(協力者)を集めます。そして,自分とパートナーの手元にあり活用できる資源について確認します。
 文化祭の場合,出し物を協力してつくるために,パートナーとなるメンバーを集め,そこで話し合います。たとえばAさんはかわいいものが好き,Bさんはスイーツづくりが得意,Cさんのお兄さんは歌がうまいといった情報を共有します。この情報共有は,エフェクチュエーションにおいて各々が持っている「パッチワークキルトの布

(5ページ参照)」を出し合っている状態に相当するでしょう。話し合いの中では,損失ラインの予算額(5万円)なども決めます。

 ステップ2 :事業を進めながら,偶然やトラブルもチャンスにして新たな価値を見つけていく
 ステップ1で明らかになった資源(パートナーの特技や特性)や予算額をもとに,具体的な企画(事業)を検討します。
 文化祭の出し物では,「かわいいもの」「スイーツづくり」「歌がうまいお兄さん」を資源として活用し,パートナーどうしで話し合って「かわいいデザインのスイーツ屋さんを出し,かわいい衣装を着たお兄さんにコンサートをしてもらう」というプランを立て,チラシのデザインやスイーツのメニュー考案に取り組みます。

 ステップ3 :予測不能な状況でもコントロールしながら前進する
 チラシや企画書をつくったら周囲の反応を見ながら調整し,多少は不確実な部分があっても決断して,計画を進めていきます。
 たとえば,手書きのチラシは少し読みにくいけれど味があり,コンセプトにも合うので採用。また,お兄さんがかわいい衣装を着ることに難色を示すという不測の事態が生じたら,代わりに販売担当がかわいい恰好をする,会場に音量制限がある場合は,マイクを使わず生の声で歌うなど,柔軟に対応します。
 このように,エフェクチュエーションは外に正解を探るのではなく,パートナーといっしょに,手元にある資源を用いて何ができるのか,そしてどのような未来を創造できるのかを柔軟に考え,偶然を味方にしながら進めていくアプローチです。

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