9.エフェクチュエーションからのイノベーション


イノベーションの原動力になる

 エフェクチュエーションの5原則は,実際の仕事や起業でどう活かせるでしょうか。
 エフェクチュエーションは,完成形のある「ジグソーパズル」ではなく,取り掛かってみないと完成形が見えてこない「クレイジーキルト(パッチワークキルト)」にたとえられます。筆者は「あるべき論にこだわらず,好きなことを得意な方法で,予算を決めてやってみる」「行動半径を広げて,偶然,見聞きしたことや縁を大事にする」,そのようにすすめています。
 自分の手元にある手段で,無理なくできる範囲で,コントロールしながら行動し,そこで出会った関係者と偶然やハプニングを味方にしながら,ストーリーをつくります。それが結果として関係者や顧客の共感を呼び,成功につながるのではないでしょうか。以下に筆者が関わった実例を紹介します。
●事例1:イベント向けのシステムを限られた予算と時間で実現

 地域に根差したサービス業の会社で入社3年目になる鈴木さんは,上司から2週間後に予定されている地域イベントに向けて,予算をかけずにIT関連の準備を手伝うようにとの指示を受けました。鈴木さんによれば,パソコンやスマホでも閲覧できるホームページの作成,関係者とイベントのカレンダー共有,およびEC販売も行いたいそうです。外部のIT企業に依頼すると費用は200万円で,納品までに1ヵ月を要します。この問題をどう解決すればよいでしょうか。


 エフェクチュエーションの5つの原則にもとづいた対策 
原則1:手中の鳥の原則
 社内でITに強い社員や,ウェブ開発が趣味の社員をリサーチしました。該当者に声をかけて小規模のプロジェクトチームを編成し,何ができるか検討したところ,地域活動に参加しているメンバーも多く,さまざまな意見やアイデアが出ました。
原則2:許容可能な損失の原則
 上司の決裁が得られる10万円以内に予算を設定し,予算内の方法を検討しました。
原則3:クレイジーキルトの原則
 各部署から専門性を持ち,プライベートでさまざまな活動をしている社員を巻き込みました。特にマーケティング部からSNSの活用や無料ホームページを使った広報活動,製造部からは低料金のクラウドシステムに関する情報を得たのは有益でした。
原則4:レモネードの原則
 予算が足りない中,NPO活動に関わっているメンバーが,非営利活動で利用可能な無料ソフトを紹介してくれて,それを新たな節約手段として活用しました。
原則5:飛行機の中のパイロットの原則
 鈴木さん自身,暗中模索しながらも主体的に行動し,周囲と協力しながらプロジェクトを推進。その結果,10万円の予算と2週間のスケジュール内で達成しました。
●事例2:猛暑による過剰在庫を活用した新商品がヒットし販路も拡大

 食品の葛を扱う倉庫会社に勤める田中係長は,和菓子用に売却することを予定して葛を大量に仕入れました。しかし,猛暑によるイベントの中止で和菓子が売れず,過剰在庫によって倉庫費用が増大しました。


 エフェクチュエーションの5つの原則にもとづいた対策 
原則1:手中の鳥の原則
 田中係長は,手元にある葛を,近所の和菓子屋に勤める妻が発案したアイスづくりに活用することにしました。
原則2:許容可能な損失の原則
 新たな投資はアイスの材料費や商品パッケージなどの最小限に抑え,在庫の葛を使ってアイスの試作品を開発しました。
原則3:クレイジーキルトの原則
 妻のインスタグラムスキルとデザインセンスを活かして宣伝活動を行い,妻の勤務先の和菓子屋とも提携し,共同で葛のアイスを販売しました。
原則4:レモネードの原則
 猛暑によって,高齢者施設でアイスの需要があることを発見しました。こうした新しい顧客層も加えて販売対象が拡大しました。
原則5:飛行機の中のパイロットの原則
 和菓子屋の店頭で葛のアイスの販売を始め,顧客の反応や意見を素早く商品にフィードバックし,商品の改良に努めました。

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